dinner
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こんな衝動は突然やっていくる。
例えば練習が終わった後、水飲み場で頭から水を被り、きつく目を閉じながら息を吐き出す口元を見た瞬間。
風呂上りの君が窓辺から外を眺める後姿、Tシャツの影から肩甲骨の形が浮き上がっているのを見た瞬間。
僕は、視線が外せなくなる。
シャッターを切った瞬間、ストロボが光ったような残像が瞼にはっきりと残る。
意外と僕も単純なんだな。
体の構造はそんな風に出来ているらしい。
雄としての本能なのか、だとしたらちょっと使う相手は間違っているけど。
日中の練習で体は限界まで追い詰められているはずなのに、性欲というのはそれとは違うところにあるのかもしれない。
何かで読んだ話では、男性が体力的に疲労している時のセックスのほうが受精率が高いらしい。
種を保存する為の本能が強くなる為だとか。
まったく皮肉な話だ。
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「お前、今日体の調子でも悪いんじゃねぇか?」
「そんな事ないよ、いつもと変わらないんじゃない。」
窓辺に立っていた君の隣に並んでみた時、不意に君が声を掛けた。
どこか力の入らない気の抜けた声を聞いて君はしょうがねぇな、とか呟いて手を伸ばす。
幾つかまめが出来た君の手が僕の額を覆った。
本当はちょっとドキッとしたんだ、君の行動に。
「熱はねぇみたいだな。」
「当たり前だろ、君のその手の熱の方がよっぽど高いよ。
君みたいに体温の高い人間からしたら、周りの人はよっぽど高熱にうなされない限り発熱した事にならないね。」
そのままその手を握り引き寄せる。
「・・・・・・・・・お前、疲れてんだろ、止めとけよ。」
「心配してくれるのはありがたいんだけど、そんな言葉の方が余計に疲れさせるから。」
「何だよ、人が本気で心配してりゃその刺のある態度は!」
君を虐めるのは本当に楽しい。
僕の言葉一つでコロコロと表情を変えてくれる。
「誤解しないで欲しいんだけど、これは僕の大事な愛情表現なんだからね。」
・・・・・・ほら、またそんな風に動揺してくれるから。
でも、今日は確かにちょっと疲れているみたいだ。何だかお腹が空いてきたな。
僕にシャツを脱がされ、上半身を露にした君の背中に手を回す。
「この形がいいんだよね・・・・・・」
筋肉が覆っているけどその下から小さな山みたいな肩甲骨が影を作る。
「天使の羽、とはよく言ったもんだな・・・・・・」
指をその山に沿って滑らせる。
首筋に舌を這わせれば君の気配が軽く強張るのを感じる、我慢しなくてもいいのに。
「吾郎くんの肌は滑りがいいね、簡単に全身舐められそうだよ・・・・・・。」
その言葉を聞いて君は一瞬身震いをした。
僕の言葉で君の身体が変化していく。
だから僕は止められない。
舌を肩で留める。
吾郎くんの大事な肩。愛おしい肩。
ここを基点として出発した君の球を受けているんだよね。
軽く歯を立てた。
投手に必要な筋肉が骨を覆っている。・・・・あ、いい感触だ。
舌を這わせながら。角度を変えながら。何度も歯を立てる。
君は小刻みに震えている。
「・・・・・こんな事でも感じるんだ吾郎君の身体は・・・・・・」
それでもゆっくりと舌を移動させる。
僕は君の背後に回った。
「人体のお手本みたいに綺麗な背中だね。」
肩甲骨の下から上へ舌を這わせた後、歯を立てた。
「ここだったら少し歯形が付いてもいいかな?」
小さく問い掛けてみる。
「っ!止めてくれ、しゃれんなんねぇ・・・・・・・・」
上気した君の声を聞いて僕は満足した。
「そうだよねぇ・・・・・自分で見れない背中に、そんな歯形が付いててみんなに見られたら恥ずかしいよねぇ・・・・・」
さっきより強く歯を立てる。
「っく・・!おい、止めろって言ってんだろ・・・・・・」
君は後ろを振り向こうとしている、ちょっと慌ててる?
もっと強く・・・・・・・・
「止めてくれったらっ!」
「大丈夫だよ、この位。明日の朝には消えてるよ。」
その言葉に君の気配が緩む。
素直すぎる君のその態度は僕の心配事でもあるんだけど。
「そんな風に簡単に人の言葉を信じるのは僕が相手の時だけだからね。」
もう、其処は早く服から解放してやらないと可哀想なくらい勃っていた。
君の背中に僕の胸をつけたまま右手で其処に指を這わせながら、左手で服と下着を下ろす。
そんな時のちょっとぎこちない時間が気恥ずかしいけれど、君が自分からその行為に協力するように動いてくれるから、僕は少し安心する。
君の裸体は本当に美しい。
特にこの後姿が好きなんだ。
本当はこのまま、欲望に支配されて苦しげな表情をする君をこの窓辺に立たせて、眺めているだけでもいい。
それだけで僕は満たされる気がする。
でも、そこで立ち止まることは許されないから。
進むしかない。
オプションでしかないんだ、残りの行為は。
僕は君の足元に跪いた。
引き締まった筋肉でできた臀部。
腰を掴み、唇をそこに寄せた。
軽く触れるだけで君の体が震える。
「美味しそう。」
「趣味悪ぃぞ」
「それって誉めてる?」
そのまま歯を立てる。
「やっぱり美味しいよ、本当に食べちゃいたい。」
「お前が言うと、なんかシャレんなんねぇんだよ。」
何度も何度もゆっくりと噛み砕いていく。
時々、思いきり噛み千切ってやりたい衝動に駆られる。
僕は肉食獣みたいだ。
「そんな事言って本当は吾郎くんも僕に食べられたいって思っている癖に。」
「・・・・・・・・・・思わねぇ・・・よ・・・・・」
息が上がっている。そろそろかな。
腰から前へ手を滑らせる。
「すごいね・・・・吾郎君・・・・・こんなに濡れちゃって。
立ってするの、好きなんだ。」
返事はない。
先端に人差し指をゆっくりと旋回させると、充分潤った其処は別の生き物みたいにピクピク反応する。
「ほら、すごく大きくなってる、本当は今日・・・・・・・したかったんでしょ」
答えは僕の頭の上から降り注ぐ君の息使い。
その激しい息を聞くと、僕の体まで冷静さを失っていく。
結局は、こうやって性欲に支配されていくんだ。
舌を君の蕾に宛がう。
「っう」
「駄目だよ、こんな窓辺で声を出したら外に聞こえちゃうよ
今日は静かにしてな」
舌の動きは止めない。
「・・・・・・っう・・・・ぁ」
必死で声を押し殺そうとしている君の気配を感じる。
鈍感だな、そんなことしたら余計に君の努力を無駄にしてやりたくなるだけなのに。
僕は立ち上がり、君の背後に密着して自分の其処を君に押し当てた。
「っぅあ・・・あ」
「声を出しちゃ駄目だって言ったでしょ」
まだちょっと強引だったかもしれない、でもその方が君を追い詰められるから。
ゆっくりと奥まで達した後、右手で君の陰部を弄ぶ。
「だめだ、とし・・・・・止めてくれ」
「まだそんなお喋りする余裕があるんだ・・・・・・・・」
腰を引き、強く打ちつける。
「ぅああ・・・・・あ」
「悪いけど、もう少し声を小さくしてくれるかな」
左手で君の口を塞ぐ。
熱い息が手を湿らせる。
指を口内に差し込む。
君の舌が指に絡む。
・・・・・・・もう駄目だよ・・・・・ね・・・・・?
僕は全ての動きを速めた。
僕の呼吸と君の呼吸の速度が重なる。
「・・・・ねぇ吾郎くん・・・・・・・一緒に・・・・・イこう・・・・・?」
僕等は同時に果てた。
最後に君が思いきり手に噛み付いたのは予想外だったけど。