匂い
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はじめは気のせいかと思った。

吾郎くんに限ってそんな事はないだろう。

体に残った微かな匂い。





この匂いは知っている。




臭覚は記憶に直結しているものらしい。

一瞬にして過去の時間が蘇る。

幾つかの場面が脳裏を過った。



それでも僕は気がつかない振りをしていた。

気のせいだ。きっと何処かで体に染みついてしまっただけだろう。

そう思おうとしていた。

君の口内に舌を這わせて、それが確信に変わっても。





確かに味を感じた。

今までに味わったことのない、君の味。

でも何処か懐かしいこの味。

これは大人の男の味だ。










「吾郎くん。」

君の口から漏れる息の全てを丹念に確認するように口腔を重ねた後、

僕は名前を呼んだ。


初めてそれを確信してから体を重ねるのはこれで3回目だった。

まだその味は続いている。


「ん、何だ、とし?」

口を離し、少し虚ろげな君の視線を見つめた。


「・・・・・・・・・・。」


「何だよ、言いたい事があるんだったらはっきり言えよ。」



「・・・・・・・吾郎くん、煙草吸ったね?」




「え、・・・・・・あ・・・・・・・、いや・・・・・・」


あからさまに君は動揺する。


「分るよ、すぐに。
これは何処かでついたものじゃない。体の奥から味がする。」



「・・・・ちょ・・ちょっとだけな、どんなもんかな、とか思ってよ・・・・・・

でも・・・・・・・・・・も・・・もう止めるって。

としにバレちまったから。」





君は照れくさそうに頭を掻いてわらった。


「そう。」

僕は視線を落とした。


「・・・・って言うか、何でお前こそ煙草の味なんて知ってんだよ。」


「どうしてだろうね・・・。」

君の言葉を遮るように、再び口を塞いだ。


そんなことはどうだっていい。

僕が気掛かりなのは、君を煙草なんかに走らせた理由。






どうして君はそうやって一人で背負おうとする?

君が興味本位でそんなものに手を出すなんて考えられない。

そこまで君を追い詰めたものは一体何?

僕では駄目だったの?

僕では君を助ける事は出来ないの?









君の強さと脆さが僕には辛い時がある。













すみません、絶対にあり得ない状況とは思いつつ。
ただ単に、くわえ煙草の吾郎を妄想して、萌えてしまっただけです。
で、絶対、吸殻ゲットする←最低。




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