二人で飲むと
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「寿、お前ってほんと酒、強いよな、
ちょっとはほろ酔いになって乱れるとかねぇのか?」
「吾郎君が弱すぎるんじゃない?
ジョッキ1杯でそんな顔してたら、これから先
この業界やっていけないよ、ほら、いつかビール掛けなんかも体験する時もくるかもしれないじゃない。」
「ちっ、俺ぁそんな事のために酒強くなりてーなんて思わねぇよ。」
はんっ、とした表情で君はそっぽを向く。
「酒を飲みながら、そんな子供が拗ねたような表情されてもね・・・・。」
君の横顔を眺めながら苦笑した。
そうは言っても、やっぱり僕は不安だ。
酒を飲んだ君の変化はあまりに淫らすぎる。
普段から少し鼻に掛かったような甘い、けど男っぽい低い声が多少舌ったらずな呂律の回らない喋り方になり独特の甘さを増す。
僕は唯でさえ君の声に弱いんだ。それが、そんな声で「は〜〜〜っ」なんて深い溜息をつかれちゃ、それだけで身の毛がよだちそうだよ。
それに、その表情。
吾郎君、君、そんな顔でうかつに外に出たら風営法に引っ掛かって検挙されちゃうからね。
その口、だらしなく半開きにしてないでちゃんと閉じないと。
元々彫りの深い二重瞼に掛かる濃い睫毛も幾分下がり、瞳は僅かに潤んでる。
浅黒い肌色の頬骨の辺りが艶かしく赤らんで、見るだけで熱を帯びているのが判る。
いっそ、その頬を平手で引っ叩いて僕が酔いから覚まさせてやろうか、
あぁそうだ、このまま押し倒して顎を強く掴んで鼻を摘んで人工呼吸してあげるのもいいかもしれない・・・・。
「おーーーーーい、とし君?」
目をとろんとさせてニカっと笑った君の声で我に返る。
「何俺の顔見てぼーーーっとしてんだよ、
とちくーーーーーん、柄にも無く酔っ払っちゃったんじゃないの〜〜?
人のこと言えないじゃんよ〜〜〜〜〜。」
腕を僕の首に絡めながら上機嫌でしな垂れかかってくる。
君に為すがままにされながらグラスに手を伸ばし口をつけた。
カラン、と氷の音が響く。
そうだね、今日はちょっとばかりペースが早過ぎたみたいだ。
少し酔ったみたいだね。
ただね、僕の酔い方は君とは違うんだよ、
酔った自分を自分でも驚くくらい冷静に見ているもう一人の僕がいてね、
その僕が言うんだ、
「お前の思うようにしていいよ。」って。
君のせいだからね、覚悟しな。
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