贖罪
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過去は過去。
美穂に罪はない。
きっとあのことに関して美穂には何の選択の権利も、発言の権利も与えられなったのだろう。
頭では解っていた。
選ばれた美穂も、僕とは全く違った苦悩を味わったに違いない。
両親への疑問、失望、絶望、そして僕への負い目。
7年と言う僕等にとってとてつもなく長い間、そんな思いに時間を費やしたことだろう,

それでも、こうして希望を胸に僕の元へやってきてくれた。

それでいいじゃないか。
これ以上何を望むと言うんだ。


恐怖?
また僕から離れていってしまうのではないか。

繋ぎ止める為?
その為だけに?



その為に、僕は妹を抱こうとしているのか・・・・・?







*




「良かった・・・。こうやってちゃんとお兄ちゃんと会うことが出来て。」
少し目を潤ませた美穂は寿也の顔を上目使いに見上げ、はにかんだ。


「これからはいつだって、会いに来ていいんだよ。
・・・・僕達は二人っきりの兄弟なんだから。」



寿也はそっと美穂の肩に手を触れた。


大きな手だった。
7年もの月日が経っていたら、子供の頃の感触とは違っていて当たり前のことだろう。
男の7年の変化。
それは美穂の想像もつかないくらいのことだった。

手の大きさ、肩の広さ、胸の厚さ。
無意識のうちに美穂はそれらを感じ、動揺していた。
「美穂、・・・大きくなったね。

すごくきれいになってびっくりしたよ。

あんなにケンカばかりしていたから、
美穂がお兄ちゃんの事を見てくれていたなんで思いもしなかった・・・・。」



柔らかい声・・・・。
お兄ちゃんの声ってこんな声だったっけ・・・・・
あぁそうか、もうお兄ちゃんも大人だもんね、あの頃のお兄ちゃんとは違うんだよね・・・


そんな事を思いながら美穂は寿也の顔をそっと見た。

優しい目をして美穂を見てくれる。


あの頃もそうだった。
ケンカもたくさんしたけど、やっぱりお兄ちゃんはちょっぴり美穂の自慢だった。
リトル時代、試合で活躍するお兄ちゃんの姿。今でもはっきり覚えている。


でも。
今、こうやって目の前のお兄ちゃんと視線を合わせていると。
どうしたんだろう・・・私、何だか心臓がドキドキする。
こんな風に男の人と二人っきりで向き合った事なんてないから。
それでだよね・・・・・。
お兄ちゃんにこのドキドキが伝わったら何だか恥ずかしい。









続き




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