陶磁
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ほんの少し、肌が赤らんでいる気がした。
それでも、それすら「気のせいだ」と思う。
お前が俺に、そんな素振りを見せる筈がない。こうしている今も決して目を合わせようとはしない。
どこを見ている、その目は?何を見ている?その目で。
そっと頬を両手で挟む。
見下ろす俺を見て欲しいとも思わない。
お前のその目が俺を捕らえれば、俺はそこから逃げられなくなるから。
「何をそんなに恐れる。」
見上げるお前が口にした。
あぁ、俺はお前が恐ろしい。
こうして俺の前に身体を投げ出すお前は、俺の知るお前の姿とは違うから。
なぜ、俺にこの姿を晒す?
見下ろす首筋の動脈が波打つ。これがお前の身体なのか。
指の先端でそれをなぞる。
「なぜ目を閉じない。」
硬質な身体を確認する。
固い筋肉の凹凸が手に伝わる。
顔を近づけると、髪先が肩に触れ、小さく身体を振るわせた。
初めて肌に触れた瞬間。
お前にこんな熱があることさえ違和感を覚えた。
いつか見た夢の中でのお前の身体は磁器のように冷たかった。
お前の胸に俺の胸を重ねる。
一瞬その重みに眉を顰め「うっ」と声を漏らした。
崩れそうになる堤防を塞き止めながら、なるべくゆっくりとお前の身体を溶かす。
「熱い磁器だ。」
「何のことだ。」
口調を変えないお前が憎い。
いっそ憎しみで抱ければ楽なのかもしれない。お前を壊そうとして抱けば。
不意に手首を掴まれた。
「そんなに俺を抱く事が怖いか。」
「ふざけるな。」
「俺が抱けばいいのか。」
「馬鹿にしているのか。」
「そうだ。」
くれてやる。
もし、俺の身体が欲しいのならば、いくらでもこの身体をくれてやる。
この髪も、この熱も、この細胞も。
流れる濁流のような血に身を任せた。
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