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【3】
―――――ふざけるな
お前に何の魂胆があるのかなんて知ったことじゃない。
唇でも何でも躊躇う必要なんかない。
くれてやるまでだ。
吾郎はドライバーの肩を掴んだ後、更に腕を回し後ろから頭を抱えた。
強く頭を固めたまま、ねっとりと舌を這わせドライバーの唇を開く。
男の唇に触れた事などなかったが、想像するよりもドライバーの唇は柔らな弾力で吾郎の唇に吸い付いた。
吾郎がドライバーの口の奥まで舌を差し込み、唇ごと覆うように含ませると、ドライバーの喉からくぐまった声にならない音が漏れる。
これ以上近づけない程、唇を交え、僅かに唇を離すと角度を変え、再び舌を割り込ませる。
吾郎は薄く目を開けドライバーの顔を見る。眉を顰め、苦しそうな顔をしていた。
激しいキスとは裏腹にどこか冷静な気持ちのまま、その表情を見詰める。
こうして深いキスをしていても、欲情と同時に何か違うものを感じていた。
あの夜に感じた狂ったような欲情だけではない、違う何か。
―――――あぁ、負けたくねぇってことか
どこまでもこいつを乱してやりたい。
こいつの仮面を剥がしてやる位に。
そして、こいつの本性を暴いたまま、こいつをめちゃくちゃにしてやる。
チュ、と音を立て突然吾郎が唇を離すと、ドライバーはゆっくりと目を開け吾郎を見た。
「今日はちゃんとイかせてやるよ」
「そう」
短く会話をする。
それと同時に吾郎は頭を押さえつけていた腕を放し、ドライバーのベルトに手を掛け外していった。
カチャカチャと金属音だけがする。ドライバーはじっと吾郎の手元を見詰めている。
ファスナーを降ろしスラックスを脱がしていく。
全ての着衣は撓み床に落ちた。
吾郎はそのままゆっくりと体重を掛け、ドライバーの体をベッドへ沈めた。
スプリングがバウンドしてドライバーの体は軽く弾む。
吾郎もドライバーの肩越しに片手を着くと、視線を逸らさないままドライバーの靴下も下ろし全身に纏ったものを全て取り去った。
目の前で全裸を晒す者は、確かに自分と比べても遜色のない青年だ。
タクシードライバーを職業としている者にしては必要以上に均整のとれた体。
何かしら運動を熟練していた事を感じさせる無駄のない筋肉が腕や肩、胸を覆っている。
そしてそれを包む白い肌。
汗のせいか、仄かに湿気を帯びていた。
―――――黙ってりゃ、オンナにだってモテるだろうに
漠然と吾郎は感じた。
なんだってこんな仕事して燻ってるんだ。
「イかせるって言ったのは口だけ?」
ふと気が付くと見上げるドライバーの目は、吾郎を見詰めたまま挑発の色を含んでいる。
「なんだと」
吾郎は再び唇を押し付けた。
キスをしながら自分のネクタイを緩め、引き解く。
忙しなくYシャツのボタンを片手で外し脱ぎ捨てる。
吾郎は一刻も早くこのドライバーと同じように、自分の全身を覆う全ての物を剥ぎ取ろうとした。
全裸になった二人は、そのまま固く互いの身体に腕を回しきつく抱き合いながらしばらく互いの呼吸を交換し合ったが。
吾郎はそこから唇を剥がし、湿った舌をドライバーの首筋に辿らせた。
耳を覆った髪を手で除け、うなじ近くを口付けながら舌先を滑らせる。
あの夜、吾郎が付けた赤い跡はもう消えていた。
ゆっくりと肩まで舌を這わせても、また濡れた首を戻り耳元を啄ばむ。
声を押し殺そうとしているのか、不自然に止めるような息遣いだったが、行為自体はドライバーを刺激するものだったらしい。
その証拠に、ドライバーの性器はゆっくりと勃ち上げ吾郎の身体に触れている。
吾郎が唇で触れて濡れた首筋に髪が貼り付く。
ドライバーはそれを鬱陶しそうにそっと手で梳いた。
積極的に催促をするようで、どこかブレーキを掛けるような中途半端なドライバーの態度は、吾郎の欲情を誘う。
「もっと素直に感じろよ・・・・・え?」
好戦的な笑みを浮かべ、ドライバーを見下ろす。
自分の言葉が更に欲情を加速させていく。
「としくんは結構敏感だな」
そう言うと唇を胸に寄せた。こんなに固く、厚みのある胸に唇を触れたのは初めてだった。
心臓がいつもより近い。
「っ・・・・・・」
ドライバーは相変わらず耐えるように歯を食い縛っているが、そうすればそうする程、本当の感覚は身体が素直に教えていた。
「ほら、これだけでこんな風になっちまうんだからな、
あんた、本当は相当好きだろ?」
胸に舌で触れながら、上目遣いに見上げながら手を伸ばす。
あの時ははっきりと拒否された場所。
吾郎は思い出していた。
「触るな」
そう言った時のドライバーの声。視線。
そこに指が触れた瞬間。
ドライバーの身体は大きく震え仰け反った。
何か、衝撃が走ったような反応だった。
安堵からなのか、吾郎は思わず言葉を続ける。
「すげぇな・・・・あんた、ここ、自分で触ったりしねーの?」
今、こいつは完全に支配されてる。
手の中に包んだドライバーの性器を弄りながら吾郎は心の中で笑った。
―――――そうだよ
俺のいいなりになってよがってりゃそれでいいんだよ
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