taxi
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【3】




ドライバーは虚ろな目を吾郎に向けながら短く肩で息をしている。


大きく白いシャツの胸が上下していた。





「本番、させてもらうぜ」



吾郎の眼の奥で男の性が揺らめく。


「俺よ、堪え性ねぇから、こんなにガマンしたことなんかはじめてなんだよ」


吾郎はその場所に自分自身を宛がいながら呟く。


吾郎の先端が触れた瞬間、その身体がぴく、と固まる。



「やばいな、これ…すげぇ欲しい……あんたの身体が欲しくてたまんね……」

そこは、吾郎から溢れていた液体で潤っていた。


ゆっくりと身体を沈める。




「――…ぅあ…」



最初に声を上げたのは吾郎だった。


こんなにも切羽詰っていたのかと自分で思い知る。


他人の体内に身体を差し込む――――慣れきった行為だと思っていた筈なのに、まるで違かった。


排除しよとする位押し戻そうとする抵抗に逆らいながら、この体内に自分を埋めていく瞬間。





苦しい程の焦燥、苦しい程の快楽。




少しずつ飲み込む部分から全身に伝わり、激しい衝動を生みそうになる。


激しく突き壊してしまいたい衝動。それでも吾郎は必死にそれに耐えた。







「……聞かせてくれよ…あんたの声……」



絞り出すように囁いた。

全身を巡る体内の熱が汗になり吾郎の額を濡らす。

「入ったぜ」




動きを止め、息を切らせながらドライバーを見た。


吾郎から流れる汗がドライバーを濡らす。




答えはなかった。

ただ、身に起こっている感触にひたすら耐えるように息を潜め、固く目を瞑っている。


突き上げた顎が喉を露にし、外灯を映す。


吾郎は動けない。


激しすぎる位に締め付けられた圧迫感から動く事が出来ないのと、自分自身、動いてしまったらすぐにでも達してしまいそうな程の限界を感じていたからだ。




静止する時間。

止まった流れ。

しかし、こんなにも狂おしい静止があっただろうか。

吾郎は引き裂かれそうな二つの感覚に震えた。




―――――息をすることさえ忘れそうだ







そう思った時、気がついた。

歯を食い縛ったまま動かないドライバーの体。


「あんた、息、してねぇんじゃないか?・・・死んじまうぜ?・・・ほら、息吐けよ…」

その言葉を無意識に受け止めるように、ドライバーの口から大きく息が吐き出される。


ゆっくりと肺が沈んでいく。

そしてその動作は、ドライバーの身体に大きな変化をもたらした。







「――――っぁ…」



それまで苦痛に耐えるように刻まれた眉間の溝が消えた。

ハッとしたように大きく目を見開き、身体を震わせる。




と同時に吾郎を締めつけた身体の奥。

それまで排除する為に固く閉ざそうとしていた場所が艶かしく蠢く。




「あぁ・・ぁ・・・」


悲鳴のような嬌声。

ドライバーは目を見開いたまま恐ろしい程の快楽に浚われていた。




手は空を掴むように伸ばされる。

見開いた目には何も映ってはいない。

吾郎はドライバーの変化に唖然とした。







「・・・・いいのか?・・・・そんなにいいのかよ?」

掠れた声で問う。




それが快感だということはドライバーの性器を見れば明らかだったが俄かには信じられなかった。

ゆっくりと腰を引く。

もう一度ゆっくりと沈めていく。

ここまでか、と思った時。




「あぁ・・・っ・・・っはぁ・・・」







苦しげな男の声。

快楽を含んだ、それでもそれを否定するような。




吾郎の表情が変わった。

吾郎は憎々しげにドライバーを見下ろす。





「もっとだよ…そんなんじゃ足りねぇんだろうよ?……ほらっ…」




「くっ…ぁっ……」







激しく身体をぶつける。

余計な事を考えたくない。




いつものように・・・

ただ吐き出すためにこうすればいい―――――










強くドライバーの肩を握り締める。

無意識のように、吾郎の腕をドライバーが固く掴んだ。

指の跡が酷く残るくらい激しく。



俺はこいつを壊しちまうかもしれない。

ふと思う。


ならばいっそ壊せ…

取り返しがつかない位壊しちまえ―――――








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