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【5】
「最後の1回―――――じゃねぇよな」
「ん」
「何度でも犯してやる」
「まったく・・・君らしい告白だ」
寿也の揚げ足取りを遮るように吾郎は唇を重ね合わせた。
はじめは静かに触れ合っていた。しかし触れ合った場所から互いの呼吸を感じると、ゆっくり口を開く。
互いに、犯しそして侵されてきた。
いつの間にかこんなにも惹き合い、互いの肌が欲しくてたまらなくなる程。
二人は口付けをしながら服を脱がしていく。
もどかしい動きが二人を急かし衝動を運んでくる。
小さな呼吸は徐々に小刻みに荒くなっていった。
全裸になり、二人でベッドに倒れこんでも唇を離すことはしない。
呼吸ごと飲み込んでしまうほど口内の粘膜を触れ合わせる。
キスだけで達してしまいそうな昂揚に眩暈がし、ようやく吾郎は唇を引き離した。
「・・・・やべぇ・・・お前とキスするの、なんか無茶苦茶・・・気持ちいい・・・・・」
肩で息をしながら虚ろな目で吾郎は寿也を見詰める。
「そんな毒・・・入れてないよ・・・・・」
答える寿也も頬を昂揚させ、艶を含んだ目で見ていた。
しかし途端、吾郎は寿也から身体を離し、視界から消える。
「吾郎君?・・・っ・・ちょっ・・と・・」
吾郎は寿也の足元へ身体をずらすと、寿也のものを口に含んだ。
それまで何度身体を重ねても互いにその行為はした事がない。
しかし今、純粋な衝動として、吾郎は寿也の全てを口付けたいと思った。
突然の行動に寿也は戸惑いを隠せない。
「・・っう・・やめっ・・」
寿也は反射的に抗議の声を上げたが、吾郎の動きによってそれはすぐに形を変えていく。
「・・・・っぁ・・ごろう・・くん・・・・」
羞恥と快楽の入り混じった甘い声だと思った。
舌先をゆっくりと動かせば、その動きに素直に従い硬直と弛緩を繰り返す。
そんな反応全てが愛おしい。
吐息は次第に増し、それと共に口内から直に寿也の快楽を感じられる。
吾郎は幸福な優越感を感じながら寿也の声を聞いた。
「吾郎くん・・・だめだよ・・・・もうやめないとっ・・・・ぁあっ・・」
そんな寿也の願いが聞き入られる筈がなく、吾郎は心の中でその瞬間を心待つ。
しかし。
ちゅ、と音を立てそこから唇を離すと吾郎は寿也を見上げた。
突然快楽から放り出された寿也は切なげな顔で吾郎の表情を探る。
「俺にイかせて欲しいって言ってくれ」
「また・・・」
「もっと・・・・懇願してくれ」
「―――――」
「お前の声、聞きてぇんだ・・・・
俺を欲しがってる声聞きながらしたいんだよ・・・・」
「我侭だな」
呆れたように笑う寿也だったが、それは心の中を覆う幸福感を隠すものでしかなかった。
「いいよ・・・言ってあげる・・吾郎くん
ここを・・・舐めて・・・」
「あぁ」
再び吾郎は寿也の先端に唇を寄せ小さく舌を当てる。
そんな僅かな刺激さえ大きな快楽を運ぶようで、寿也はビクリと身体を震わせた。
「ぅ・・吾郎くん・・・すごく・・・気持ちいい・・・・」
「あっ・・そこ・・・・」
「もっと・・・あっ・・・」
寿也の声は止め処なく降り注ぐ。
吾郎は自分の指先も小さく舐めると、ゆっくりと指を後ろへ回し慎重に進入させた。
「あっ・・だめだよ・・・そこは・・」
躊躇いの言葉を無視し、いたわるように触れる。
そんな動きに反応するように口内で寿也の雫が溢れた。
「・・それ・・・だめかもしれない・・・なんだかすごく・・・気持ちいい・・」
深い吐息を含んだ言葉は、決して偽りの言葉じゃなくて寿也の本心だと思う。
だから更に奥へと進ませる。
「ぅあ・・ごろうくん・・・だめ・・・だ」
「・・・いきそう・・・・お願いだから・・もう・・いかせて・・・」
「・・・あっ・・あ・・ごろうくん・・・」
途切れていく寿也の声と共に口の中に証を感じた。
「まじぃ」
照れを隠すように吾郎は子供のように笑ったが、心の中は不思議な充実感に包まれていた。
「・・・酷いな」
寿也も肩で息をしながら笑った。
吾郎は寿也の胸元に身体を戻すと寿也の首筋に軽くキスをする。
「ねぇ」
寿也の問いかけに吾郎はふと顔を上げた。
「君はさ、本当に莫迦で言わないと分からないみたいだから・・教えてあげるよ」
「なんだよ、人のことバカバカって、さっきっから」
「僕を愛してる、って言ってごらん」
「だーかーらっ!言えねーって言ってんだろ!」
「君の僕に対する感情はね、多分、愛だよ」
優しく諭すような寿也の表情を見た時、吾郎は次の言葉を発する事が出来なかった。
「―――――」
「君は僕の事、愛してるんだよ」
「―――――」
「じゃぁさ、まず、僕のちょっとでも好きかな、って思うところを言ってみて」
「なんだよそれ」
「人には散々好き勝手言わせて自分だけ逃げるなんて許さないよ」
急激に威圧的な目で言われ、吾郎はすごすごと言葉を濁しながらも答える。
「・・・・お前が運転してるとこ見るのが好きだ」
「それから?」
「・・・・お前が俺を呼ぶ声が好きだ」
「それから?」
「・・・・俺の前で旨そうに甘いもん食う姿が好きだ」
寿也はちょっと笑った。
「フッ・・それから?」
「お前のちょっと怖いとこも結構好きかもしんねぇ」
「ははは・・それから?」
「お前のイク時の顔が好きだ」
「・・・それから?」
「お前のイク時の声が好きだ」
「・・・・・・・それから?」
「わかったよ・・・多分、やっぱ俺はお前全部が好きでたまんねーんだ」
「違うでしょ・・・ちゃんと言ってごらん、僕を愛してるって」
「―――――」
寿也はそう言うと吾郎の瞳を見詰めた。
「愛してる」
ぶっきらぼうにソッポを向きながら小さく呟いた。
「子供が『ごめんなさい』って言わされてるみたいだ」
寿也は笑う。だけどほんの少し涙ぐんでいた。
「色んな感情が混じってんだな・・・
『好き』も『ごめん』も『憎い』もみんな間違ってねぇ気がする・・・・」
「本当・・・厄介だね」
でも君なら仕方がない。
寿也は吾郎の愛撫を受けながら思った。
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